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最高裁判所大法廷 昭和24年(れ)307号 判決 1951年5月02日

主文

本件再上告を棄却する。

理由

弁護人島田武夫の上告趣意第一点について。

議員選挙に際しその候補者となろうとする者が、いわゆる追放令による覚書非該当者の確認を求めるため、確認の申請をする以前に、立候補の決意を固め自己の当選を得る目的で他人に対し選挙運動を依頼し、且つ投票取まとめのための資金を供与した場合には、事前運動及び金銭供与の選挙犯罪が成立することは明らかである。それは、後になって審理の結果、覚書該当者となろうが或は非該当者となろうが、前記犯罪の成立には何等の関係がないと言わねばならぬ。論旨は、それ故に採るを得ない。

同第二点について。

被告人及び共同被告人中村宇作が、所論のように勾留され取調を受けた当時は、憲法及び刑訴応急措置法がまだ施行されていない頃のことであるから、被告人等に対し直ちに弁護人に依頼することができる旨を告げなかったからといって、所論のような違法があるわけではない。次に、被告人に対する勾留状の上部欄外(記録四五丁)には明らかに昭和二二年四月五日釈放する旨を記載し検事の認印があり、同年四月七日附公判請求書(記録八七丁)には被告人の氏名の上部に「不勾留」と記されており、また第一、二審の各公判期日の召喚状はいずれも皆被告人の自宅に送達されている。これらの諸点から考えると、被告人は勾留後僅か数日にして釈放されたものと認めることができる。それ故に、不法に長く抑留された後の自白であることを前提とする論旨は、理由なきものである。

よって旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。

この判決は斎藤裁判官の反対意見を除き、全裁判官の一致した意見である。

斎藤裁判官の反対意見は次のとおりである。

本件では、原上告判決において法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかについて何等判断が存在せず、また、所論はこの判断を不当とするものでもないから、再上告適法の理由とは認め難い。

裁判長裁判官塚崎直義は退官につき合議に関与しない。

(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上 登 裁判官 栗山 茂 裁判官 真野 毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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